粗筋




昔々、或る村の近くの山にとても麗しい容姿の雪男が住んでいた。
その男は妖の中でも特別優れた力を持っており、森を治め、人々からも慕われ、崇められていたと云う。

しかし或る時、その雪男はこれまで築いてきた何もかも――森も、そして可愛がっていた妹さえをも――全てを放り出して、吹雪の中姿を消してしまう。
一人残された妹は、百年、二百年、とずっと泣きながら、それでも一人兄の帰りを信じて待っていた。

数百年経った今、もう人間も神など忘れ、崇めない現世。
泣き続ける妹のもとを訪れた二人の旅人。
彼らのおかげでようやく元気を取り戻してきた、妹こと希隻の前に現れたのは――?

一から築く想いのお話。